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歪んだ鏡が割れる時
第5章 第五章
「えー、ご歓談中の皆様、じつは本日、ささやかなサプライズをご用意しております」

パーティも終盤に差し掛かった頃、司会者がマイクを握った。

会場が静まり、皆と同じく、私と春菜も顔を見合わせた。

BGMが息を吹き返した。
毎回司会を買って出ているという人事部長の声が、よどみなく先を続ける。

「ご本人のたっての希望で、皆様には内緒にさせて頂いておりました。本日、どうしてもこの場を借りてお祝いの気持ちを伝えたいと、こちらにお越しくださった方がいらっしゃいます。さて皆様、どなただと思いますか?」

場がどよめき、「わかりませんっ」と元気よく答えた男の声にどっと笑いが起きた。

「あはは、そうですよね。でも、ご存知の方はたくさんいらっしゃいますよ。久しぶりの方がほとんどでしょう。私も久々にお会いして非常に驚きました」

誰? 誰かしら?と、あちらこちらで声がする。

部外者の私は期待感もなく、皆の様子を伺うだけだった。
早くこの場から立ち去りたい。
その思いだけを抱えていた。

注意深く見回しても、社長や松岡、他の重役達でさえ、ゲストの正体を知らないらしく、司会者の次の言葉を待っていた。

「それでは、そろそろご紹介することに致しましょう。さあどうぞ、お入りください」

しんと静まった会場の視線が、開け放たれた右側のドアに注がれる。

沈黙の中そこに現れたのは、上下グレーの制服を身に着けた、一人の少女だった。


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