この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
歪んだ鏡が割れる時
第5章 第五章
「えー、ご歓談中の皆様、じつは本日、ささやかなサプライズをご用意しております」
パーティも終盤に差し掛かった頃、司会者がマイクを握った。
会場が静まり、皆と同じく、私と春菜も顔を見合わせた。
BGMが息を吹き返した。
毎回司会を買って出ているという人事部長の声が、よどみなく先を続ける。
「ご本人のたっての希望で、皆様には内緒にさせて頂いておりました。本日、どうしてもこの場を借りてお祝いの気持ちを伝えたいと、こちらにお越しくださった方がいらっしゃいます。さて皆様、どなただと思いますか?」
場がどよめき、「わかりませんっ」と元気よく答えた男の声にどっと笑いが起きた。
「あはは、そうですよね。でも、ご存知の方はたくさんいらっしゃいますよ。久しぶりの方がほとんどでしょう。私も久々にお会いして非常に驚きました」
誰? 誰かしら?と、あちらこちらで声がする。
部外者の私は期待感もなく、皆の様子を伺うだけだった。
早くこの場から立ち去りたい。
その思いだけを抱えていた。
注意深く見回しても、社長や松岡、他の重役達でさえ、ゲストの正体を知らないらしく、司会者の次の言葉を待っていた。
「それでは、そろそろご紹介することに致しましょう。さあどうぞ、お入りください」
しんと静まった会場の視線が、開け放たれた右側のドアに注がれる。
沈黙の中そこに現れたのは、上下グレーの制服を身に着けた、一人の少女だった。
パーティも終盤に差し掛かった頃、司会者がマイクを握った。
会場が静まり、皆と同じく、私と春菜も顔を見合わせた。
BGMが息を吹き返した。
毎回司会を買って出ているという人事部長の声が、よどみなく先を続ける。
「ご本人のたっての希望で、皆様には内緒にさせて頂いておりました。本日、どうしてもこの場を借りてお祝いの気持ちを伝えたいと、こちらにお越しくださった方がいらっしゃいます。さて皆様、どなただと思いますか?」
場がどよめき、「わかりませんっ」と元気よく答えた男の声にどっと笑いが起きた。
「あはは、そうですよね。でも、ご存知の方はたくさんいらっしゃいますよ。久しぶりの方がほとんどでしょう。私も久々にお会いして非常に驚きました」
誰? 誰かしら?と、あちらこちらで声がする。
部外者の私は期待感もなく、皆の様子を伺うだけだった。
早くこの場から立ち去りたい。
その思いだけを抱えていた。
注意深く見回しても、社長や松岡、他の重役達でさえ、ゲストの正体を知らないらしく、司会者の次の言葉を待っていた。
「それでは、そろそろご紹介することに致しましょう。さあどうぞ、お入りください」
しんと静まった会場の視線が、開け放たれた右側のドアに注がれる。
沈黙の中そこに現れたのは、上下グレーの制服を身に着けた、一人の少女だった。