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歪んだ鏡が割れる時
第5章 第五章
「私が安心して家を空け、祖母の家から通学できるのも、綾香さんがいてくれるおかげです。ありがとうございます」

継母と社長に笑顔をむける少女。
拍手が起こる中、綾香さんと呼ばれた継母は、小さく微笑んでそれに答えた。

「じつは今、ボーイさんにお願いして、会場の丸いテーブルの上に、封筒を置いてもらっています。たぶん、足りると思いますので、一つずつお取りください。お世話になった皆さんに、私からのサプライズです」

皆がそれぞれに近くのテーブルへ向かい、後方にいた私たちのテーブルにも数名が封筒を取りに来た。

「どうぞ、開けてみてください」

春菜と私も「なんだろう、メッセージかな?」と言いながら、白い封筒を手に取った。

ホールに紙の擦れる音だけがして、すぐに静寂が訪れた。そして、不穏などよめきが会場を満たし、皆がそれぞれに顔を見合わせた。

中に入っていたのは、車の写真だった。

「み、水沢さん」

「はい」

春菜の強張った表情に、私は再びその写真に目を落とした。

「えっ……」

それは夫の車だった。ただ、信号待ちをしているその車の助手席にいるのは、私ではなかった。

「だれ?…………、えっ」

その間違いを正そうと、私は春菜に笑顔を向けて、2枚目を捲る。

「…………」


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