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歪んだ鏡が割れる時
第5章 第五章
間違いない。夫の隣に松岡の妻が乗り、ホテルから出て来るところだ。しかも2枚の写真は服装が異なり、違う日だという事を物語っている。

もう1枚……。

あぁ、ホテルに入っていく雅人の車──。

「こんなの嘘よっ!」

女が叫んだ。

「悠希さんあなた、どうしてこんな事するの? こんなでたらめな写真どうやって作ったの?みなさん、これは悪質な合成写真です。いくら私の事を嫌いだからって、こんな……よくもこんな事……」

びりびりと紙を破く音が響いた。

私は雅人を目で追い、春菜は私を凝視した。

雅人、雅人……。
何?
これは夢?

長いテーブルの向こう、壁際にいた彼は写真を足元に落とし、目を見開いて立ちすくんでいた。

「でたらめなんかじゃありません。この中の2枚は、お母様の親友の、探偵さんに撮ってもらったものです」

彼女は言い終わると同時に、マイクに手を近づけた。

カチリ、と音がした。

カチャカチャと金属音がして、雑音の混じった話し声が会場に響き渡る。

『…………………ああ、もうこんなになってる、凄いわ、雅人、……こんなの綾香のお口に入らない……ん、んん、ぅん……』

え? 

皆が耳を疑った。

『あ、綾香さん……い、いいんですか、いつまでもこんな事、うぅっ…………ふふっ、大丈夫よ、私にまかせて、うふっ、課長さんの次は部長さんよ、ね?ふふふっ……私がまた、パパに頼んであげる…………で、でも俺はもうこんな事……あ、綾香さん、あ、うぁ………』


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