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歪んだ鏡が割れる時
第6章 第六章
茜をぎゅっと抱き締め、確かな温もりを感じ合う。
こんな俺をあきらめずに、ずっと想い続けてくれた女の子に、これからもよろしくと、心で呟いた。

「駅まで送るよ」

「うん」

かわいいおでこと頬にキスをして、唇を重ねた。このまま押し倒したいけど、今回は我慢する。

注文したベッドが届けば、もうせんべい布団で愛し合わなくていいんだ。
次に会うときは、ベッドを軋ませて、茜をうんと気持ちよくさせてやる。そして、茜にもっと積極的になってもらうんだ。

可愛いランジェリーも着て欲しい。恥ずかしがる茜を苛めてやる。

あんな事や、こんな事をして……。

俺の卑猥な妄想も知らずに、茜は階段を下りていく。

「近くにコンビニがあれば便利なのにね」

「まあね、でも買い物は、仕事の帰りに駅前のスーパーで済ませるよ、ドラッグストアもあるし」

「そうだね、その方が安いもんね」

「うん」

この町はマンションが多く、道幅も広い。
アパートの前の通りを左に曲がり、川沿いの歩道を歩いていく。

午後の日差しが降り注ぐ中、繋いだ手を大きく振りながらはしゃぐ俺達。
開花を迎えたばかりの桜並木が、対岸に見えてきた。

「春だなぁ」

「うん、春は出会いと別れの季節、ふふっ。あ……」

「ん?」

「彼女、もう旅立ったのかな」

「え?」

茜が誰の事を言っているのかすぐにわかった。俺も同じ事を思ったから。



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