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歪んだ鏡が割れる時
第6章 第六章
「寂しかったんじゃないかな」

茜が俺の腕を取った。

「そうだね、母親の事が大好きだっただろうし」

「ちがうよ、あの継母の方だよ」

「え?」

俺は茜の横顔を覗いた。

「きっと、始めは、上手くやっていこうと努力してたんじゃない?」

「……」

「12、3才の女の子って、いろいろと複雑な時期だよ、身体も変わってきたり、いろいろとね。……ホントの親にだって反抗的になるし。おまけに父親は、仕事で忙しいでしょ?」

「たしかに、そうかも」

実の母親しか認めようとしない旦那の連れ子と、仕事一筋の夫との狭間で孤独だったって事?

「本当の事はわからないけど。それに、だからといって、あの部屋を使うのは、腹いせにしても酷すぎる」

「うん」

「あの子も寂しかったと思うよ。みんな、寂しいんだよ」

俺は……、俺も寂しかった。
ユウも……。

茜がぴったりと身体を寄せてきた。俺達は、お互いの腰に腕を回して歩いた。

「亮ちゃん、私ね……、実は、高校の時の同級生に、告白されてたの」

「えっ?」

な、なんだって?
初めて知った。そんなこと、今の今まで想像した事もなかった。

「凄くいいヤツで、面白くて……、ときどきバイトの帰りに迎えに来て、家まで送ってくれた事もあったの」

「え……な、なんだよそれ」

「でもね、私は亮ちゃんが好きだから、これはずっと変わらないからって、ちゃんと断ってた」

ほっとした。

「私、しつこく電話した事あったでしょ?」

「う、うん」

「いつも、亮ちゃんの声が、私を掴まえてくれてた」

え……。

毎回同じような話題で、面倒臭い事もあった、あの他愛ない話?

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