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歪んだ鏡が割れる時
第7章 最終章
新幹線を使えば2時間足らずで行ける。その距離が、なかなか縮まらない私達だった。

白石は、いったいどうやって立ち直ったのだろう。孤独や怒りで、胸が張り裂けそうになった事も一度や二度ではなかった筈だ。

「あの」

「なあに?」

「今のお話、いつ頃の事ですか?」

「そうねぇ、もう15年ぐらい前になるわね。すぐに離婚を決めたわ。相手のお腹が大きくなってしまってて、どうすることも出来なかったの」

「店長、お客様です、園田様」

美波が受話器を持ったまま、白石を呼んだ。

「まぁ、園田様、お待ちしておりました。いらっしゃいませ」

接客に向かう白石の背中に、初めて悲哀を感じた。
15年前なら、白石は今の私と同じ年齢だ。それを踏まえて話してくれたのだろう。

彼女の言葉に、素直に従ってみる気になった。

雅人は、寂しいと言えないのだろう。それを薄々、いや、確かに感じていながら、余裕のないふりで無視を決め込んでいる私。

いつまで──。

泣いて謝った彼の姿を、思い出さない日はなかった。私はその上にあぐらをかいているのではないだろうか、自分の過ちを棚にあげて。

別れる覚悟がないのなら、少し近付いてみよう。どんな毎日を送っているのか知りたい。

まさか、もう誰か他の女性が?

白石のせいで、余計な事が頭に浮かんだ。
雅人が他に子供を作ったらと思うと、気分が悪くなる。

凛とした白石の後姿を、改めて見つめた。










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