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歪んだ鏡が割れる時
第7章 最終章
改札の向こうに、人待ち顔の男性を見つけた。
スーツ姿を想像していた私は、スラックスとネクタイの上に、作業服のジャンパーを着込んだ雅人に面食らった。
私を見つけ、頷いて近づいてくる。
「透子」
明るい声に相槌を打ち、改札を抜け、傍まで行って向き合った。
「来ちゃった」
「うん、ひ、久しぶり」
雅人は頬が細くなり、少し痩せて見えた。
私の荷物がハンドバッグ以外にない事を確かめ、「行こうか」と照れて笑う。
「うん」
「善光寺口から出た所に駐車場があるんだ。そこに社の車を止めてある」
「はい」
必要な事だけを話し、相手の様子を伺いながら歩く私達。
「疲れなかった?」
「大丈夫。空いてたからゆっくり座れたわ」
「そう、よかった」
自然の光を取り込んだ、ドーム状の広場を過ぎて外に出ると、くっきりと晴れ渡った青空が私を出迎えてくれた。
「空気がおいしい」
「あはは、そう?」
「そうよ、全然違うわ」
夫に遅れないよう、足早に歩いた。
「どうぞ」
社名が入った軽ワゴン車の助手席のドアを開け、私を待つ夫。
「ありがとう、お邪魔します」
駅前のホテルや百貨店、スーパー、居酒屋、コンビニ。他の街とさほど変わらない賑やかな街並み。けれど少し目の前が開けると、雄大な山々が、ここまで来た事を思い出させてくれる。
スーツ姿を想像していた私は、スラックスとネクタイの上に、作業服のジャンパーを着込んだ雅人に面食らった。
私を見つけ、頷いて近づいてくる。
「透子」
明るい声に相槌を打ち、改札を抜け、傍まで行って向き合った。
「来ちゃった」
「うん、ひ、久しぶり」
雅人は頬が細くなり、少し痩せて見えた。
私の荷物がハンドバッグ以外にない事を確かめ、「行こうか」と照れて笑う。
「うん」
「善光寺口から出た所に駐車場があるんだ。そこに社の車を止めてある」
「はい」
必要な事だけを話し、相手の様子を伺いながら歩く私達。
「疲れなかった?」
「大丈夫。空いてたからゆっくり座れたわ」
「そう、よかった」
自然の光を取り込んだ、ドーム状の広場を過ぎて外に出ると、くっきりと晴れ渡った青空が私を出迎えてくれた。
「空気がおいしい」
「あはは、そう?」
「そうよ、全然違うわ」
夫に遅れないよう、足早に歩いた。
「どうぞ」
社名が入った軽ワゴン車の助手席のドアを開け、私を待つ夫。
「ありがとう、お邪魔します」
駅前のホテルや百貨店、スーパー、居酒屋、コンビニ。他の街とさほど変わらない賑やかな街並み。けれど少し目の前が開けると、雄大な山々が、ここまで来た事を思い出させてくれる。