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歪んだ鏡が割れる時
第7章 最終章
「いつだっただろう……偶然だったんだ。出張先から、家に電話して……、それが、透子の携帯に掛けたつもりだったんだけど、たまたま間違えてね、家の電話だった。留守電に切り替わる前に切って、それを何度か繰り返した、夜中まで」

「……」

「それからは、気になって、出張の度にそうしてた」

雅人は気付いてた。

「それに……、夜中に部屋を抜け出した事もあったよね」

なんて事……。

見つめ合ったまま、声が出せなかった。

「俺のせいなんだろ?」

「え?」

「わかってたんだ、不倫なんて続けてたら、このままじゃ、俺達夫婦がダメになるなって……。でも、俺は不甲斐ないばっかりで、自分の保身ばかりを考えて、断ち切れなかった。……ほんとは早く脱け出したかったのに……。透子の様子に気付いてからは、嫉妬に狂いそうになったり、ちょっとほっとする自分がいたりして、それがますます情けなかった。全部俺がまねいた事なのに……」

「雅人……」

「その相手と今も続いてる?」

「……終わったわ、でも……」

「それならもう、やめてくれないか。俺は、……勝手なんだけど、もう俺は前を向きたい。できれば透子と一緒に。……もう充分だよ、ありがとう、話してくれて。……俺と、向き合おうとしてくれて……」

雅人は、何もかもを飲み込んでここに来た。
私にひれ伏して謝った時も、ここで一人、寂しく暮らしながらも、何も言わず。

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