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歪んだ鏡が割れる時
第7章 最終章
「私達、やり直せると思う?」

「努力するよ」

「きっと私、ぐちぐちと過去を蒸し返すわ」

「俺もそうかも」

そうなったらまた、他に目を向けるのだろうか。

「でもその時は、思い切り喧嘩するのはどうだろう」

「喧嘩?」

「醜くわめき散らす」

自分の醜くさは知っている。
押さえきれない嫉妬や妬み。

「それで上手くいくの?」

「2人に乗り越える気があれば、……一緒に笑い合う事も、増えていくんじゃないかな」

乗り越える……、2人で……。

駅に着くまで、その言葉を繰り返した。





「じゃあ、またね」

「透子、その着いたらメールして」

「わかった」

ホームまで来てくれた夫に、ゆっくりと手を振る間もなく、動き出す新幹線”かがやき”

自由席は来た時よりも更に空いていて、私はまた、窓際の席を選んだ。
暗闇が窓を覆い、自分の顔がガラスに映る。

その顔は誰にも似ていない、私だけの顔だ。



ふと、通路を歩いて来る女性の影に目がいった。

「あの、失礼ですけど……」

立ち止まったその人が話しかけてきた。

「はい」

振り向いた私の顔を確かめ、「あぁ良かったわ、人違いじゃなくって」と呟く。

「あの、ごめんなさい、どちら様……、あっ……」

「覚えていてくださいました?」

清楚な小花のワンピースに、春物の七分袖のブレザー。それだけでは気付かなかっただろう。ひとつに纏めた髪と耳元のイヤリング、涼しげな目元、それが私の記憶を呼び起こした。

「さ、紗江さん?」

「はい、紗江です」

「いったいどうして……」

雅人とのこれからをゆっくりと考えたかった私は、突然過去に引っぱられていくようで戸惑った。

「ここ、いいですか?」

「あ、はい。どうぞ」

腰を落ち着け、バッグを膝に乗せた紗江は、「お久しぶりでございます」と微笑んだ。

「たしか、水沢さん、でしたっけ」

「はい」

「なぜ長野から?」

私は、単身赴任の夫に会いに行った帰りだと、簡単な説明をした。

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