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歪んだ鏡が割れる時
第7章 最終章
次の日出勤してすぐに、夫に会ってきた事を白石に報告した。

「よかったわね、いい顔してるわよ、今日のあなた」

「はい、ありがとうございます」

「わ~、ここのどら焼きおいしいんですよねー。ありがとうございます透子さん」

長野からの手土産に、予想通りの反応をしてくれる美波。

「おやつにどうぞ」

「はい、おやつの為にきょうもがんばります!」




昨夜、自宅に戻った私は、どうしても雅人の声が聞きたくなって電話をかけた。

「透子、無事に着いた?」

「今ついたとこ」

「お疲れさま」

「ありがとう。行ってよかったけど、なんだか寂しくなっちゃった」

素直な気持ちだった。

「俺なんか玄関開けた途端、部屋が暗くて泣いた」

「ほんと?」

「涙もろいんだよ最近」

弾む会話が、また距離を縮めていった。
おやずみを言って電話を切り、寝室のドアを開ける。

夫が帰ってきたら、ここで並んで眠るのだろう。もし彼が私を求めてきたら、微笑んで彼を受け入れたい。

繋いだ手の温もりが、まだ残っていた。

上着を脱いでクローゼットを開いた時、何かがカチャリと足元に落ちた。
掛かっている洋服をかき分けて床を覗くと、ベルベットの小袋を見つけた。

「……どうしてこんな所に」

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