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歪んだ鏡が割れる時
第7章 最終章
「えーっとたしか、去年の秋頃、ほら、若い男性がパールのブレスレットを……」

「あ、一人でじっと考え込んでた人?」

「そう、そうです、その人」

小さな紙袋をぶら下げて帰る、彼の後姿を思い出した。

「昨日は閉店ぎりぎりにお見えになって、彼女さんと二人、楽しそうに誕生日プレゼントを選んでましたよ。ピンクダイヤのリング、0.2カラットの物をご購入頂きました」

「まあそう、良かったわ。なんだか嬉しいわね」

彼の大切な人は、プレゼントを喜んでぐれたらしい。

「ほんと、仲良しさんでしたよ。そのうちきっと、婚約指輪もうちでお買い上げです」

「そうなったら言う事なしね」

「えぇ、私もがんばってお金貯めなきゃ」

美波は近頃、対面販売に自信をつけ、顧客も増えてきていた。仕事への取り組み方が白石と似てきて、頼りになる。
新人が入ってきても、しっかりと教育できるだろう。

私はおぼろげながらも、白石の提案を頭に描き始めていた。

乗り越える……2人で……。

雅人、やれるかな、私達。

2人で──。









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