この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
歪んだ鏡が割れる時
第1章 第一章
「おはようございます」
「あ、水沢さん、おはようございます。丁度よかったわ、ちょっと……」
「はい」
白石に手招きされ、頭で台詞を復唱する。
──失礼のないように心掛けていましたので緊張しました。夕食をご一緒させて頂いた後、すぐに帰宅しました。
「たった今、松岡様からお電話を頂いたところなの」
「えっ」
肩を寄せてきた白石の、次の言葉を待った。
「あなたのお陰で楽しいコンサートだったって」
「本当ですか、良かった、ほっとしました。失礼のないように……」
「凄く感謝されたわ。それでね水沢さん、話はここからよ」
「は、はい」
彼はいったい……。
「松岡様のお知り合いに、近々婚約される方がいらっしゃるらしいの。どうやらうちを紹介してくださったらしくて、明日にでも訪ねて行く筈だからよろしくって」
「え……」
白石が満面の笑みで頷いた。
「あなた、コンサートが済んだ後、すぐに帰っちゃったの?ふふっ、食事ぐらい奢ってもらえばよかったのに。いかにも水沢さんらしいわ。きっと、あなたのそういう所を気に入ってくださったのね」
「……はぁ」
「とにかく、あなたにお願いしてよかったわ。ありがとう、お疲れ様」
「いえ、お役に立ててよかったです」
控室に入り、私はようやく肩の力を抜いた。松岡の手際の良さに、ほっと胸を撫で下ろした。
「あ、水沢さん、おはようございます。丁度よかったわ、ちょっと……」
「はい」
白石に手招きされ、頭で台詞を復唱する。
──失礼のないように心掛けていましたので緊張しました。夕食をご一緒させて頂いた後、すぐに帰宅しました。
「たった今、松岡様からお電話を頂いたところなの」
「えっ」
肩を寄せてきた白石の、次の言葉を待った。
「あなたのお陰で楽しいコンサートだったって」
「本当ですか、良かった、ほっとしました。失礼のないように……」
「凄く感謝されたわ。それでね水沢さん、話はここからよ」
「は、はい」
彼はいったい……。
「松岡様のお知り合いに、近々婚約される方がいらっしゃるらしいの。どうやらうちを紹介してくださったらしくて、明日にでも訪ねて行く筈だからよろしくって」
「え……」
白石が満面の笑みで頷いた。
「あなた、コンサートが済んだ後、すぐに帰っちゃったの?ふふっ、食事ぐらい奢ってもらえばよかったのに。いかにも水沢さんらしいわ。きっと、あなたのそういう所を気に入ってくださったのね」
「……はぁ」
「とにかく、あなたにお願いしてよかったわ。ありがとう、お疲れ様」
「いえ、お役に立ててよかったです」
控室に入り、私はようやく肩の力を抜いた。松岡の手際の良さに、ほっと胸を撫で下ろした。