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歪んだ鏡が割れる時
第2章 第二章
ある程度揃ったら、あの気取った女に送りつけて脅してやる。旦那にバレたら今の贅沢な生活なんて消えてなくなるんだから。

「ユウちゃん、いくら要求しようか」

ユウから俺の携帯電話に今の写真が送られてきた。

「30万?それとも50ぐらいにするかな」

「もっと高くても平気じゃない?」

「マジ?」

「だってお金持ちだよ?」

いくら金持ちだからって、主婦が自由にできる金ってそんなにあるのか?
欲を出して警察沙汰になっては元も子もない。

「ユウちゃんはいくら欲しい?」

「私はいらない」

「え、なんで?ばあちゃん小遣いくれる金あるの?」

ユウは母親が亡くなってから、ばあちゃんちで暮らしてるらしい。父親の話はしないから、母子家庭だったのかも知れない。
俺は、ユウのそういう事情に踏み込む気はなかった。

「私、欲しい物もないし友達もいないから、そんなにお金使わないの」

メールの着信音が鳴った。

「マジでいらないの?」

「うん。ねぇ亮さんメールだよ」

ユウが余計な気を利かせる。

「あぁ、どうせまたシフト変更の連絡だから後でいいよ」

「ふーん」

きっと茜からだ。夜には電話が掛かってくる。来年こっちに出て来てからのあれこれを、いつも楽しそうに話す茜。

アパートぐらい用意してやるよと豪語したのは2年前だ。無理しなくていいよ、と言われて余計に引けなくなった馬鹿な俺。

いつか茜とドライブするつもりで買った中古のスポーツカーは手放すしかなくなって、今ではローン返済だけが残った。

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