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歪んだ鏡が割れる時
第2章 第二章
「雨やんだみたいだから、そろそろ帰るね」

ユウは髪を結び直して帰る素振りを見せた。

「カップ麺食べていけば?」

ユウが明るく笑う。

「今日は早く帰るっておばあちゃんに言ってきたから、カップ麺はまた今度」

「そっか、じゃあ気をつけて。また連絡するよ」

「うん、またね」

階段を下りる足音が遠退いて、部屋が殺風景になった。
扇風機の首を俺専用の向きに固定しながら、エアコンも必要だと思いを巡らせる。
正月に帰省した時、都会での一人暮らしは不安だと言ってた茜には、安心出来るアパートを探してやりたい。

やっぱり100万は必要だ。いや、150にしとくか。

ユウが帰ってから2時間。すっかり陽の落ちた窓の向こうに、一台のタクシーが停車した。

「けっ、帰りはタクシーか」

降りてきた女は辺りを見回し、外灯に照らし出された白いアプローチを急ぎ足で玄関に向かった。

ふわりと波打つ短い髪とタイトなシルエット。年上の主婦なんかに興味ないけど、ちょっと気取ったあの女なら抱く自信がある。

「あの野郎、平民の分際でうまくやりやがって……」

俺は国産車野郎に嫉妬した。

不倫妻は、ドア近くの低い壁に設置されたポストを確認する。そして家の鍵を開け、世間で言うところの貞淑な妻に戻っていった。




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