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歪んだ鏡が割れる時
第2章 第二章
それから約30分、旦那の車が現れた。8時過ぎだ。

「お、出張から帰ってきたのか。妻の本性も知らないで、毎日必死に働いてるんだろうなぁ、可哀想に」

駐車場を出たヤツは、嫁さんが歩いた小道を俯き加減に歩いてく。外灯の青白い光が、その背中を寂しげに浮かび上がらせていた。

あの女、俺が脅したら不倫やめるよな。

俺は正義の味方。
復讐するは我にあり。
あ、違うか。

「ははっ」

ドアの向こうに消える男を見送り、俺は携帯電話に届いた写真を見直した。

遠目で顔はよく見えないけど、男はどう見てもあの旦那よりだいぶ若い。女より若いかも知れない。二人してどこへ行ったんだか。

「ま、精々がんばれ」

がんばって俺にチャンスを与えてくれ。

出窓からカメラを取って、保存してある画像を見返した。
男が家に出入りしている場面ばかりが十数枚。これでは、セールスマンが何度も訪問しただけだと、しらを切り通すだろう。

今のところ、ユウが撮ったものが一番の証拠になりそうだけど、まだちょっと物足りない。もっと決定的な証拠がなければ、計画の実行には程遠い。

ため息をついたところに、茜から電話が入った。

「毎日暑いね。亮ちゃん元気?」

「あはは、元気だよ。2日前に話したばかりだろ?」

「いいでしょう?心配なんだから。病気してもすぐには行ってあげられないんだからね」

小首をかしげ、拗ねて口を尖らせる仕草が目に浮かぶ。


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