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歪んだ鏡が割れる時
第2章 第二章
茜は大学の後輩だ。今もこうして遠距離恋愛を続けてこられたのは、相手が茜だったからだろう。

茜と話していると、気持ちが楽になって、一番楽しかった頃の自分に戻れる。こんな俺のどこを好きでいてくれるのか、ずっと変わらないでいてくれる大切な彼女。

怖い事件に巻き込まれないでね。
暑いからちゃんと水分捕ってね。

平和な会話に癒されるひと時。その終わりは、毎回同じ言葉だ。

「ところで亮ちゃん、浮気してないよね」

「またそれ?忙しくてそれどころじゃないって。そういう茜こそ大丈夫?」

嘘をつくのが上手くなった。茜との会話の中で、本当の事はほとんどなかった。

田舎でひとり、俺の健康だけを心配している母親にも、嘘ばかり並べて安心させてきた。でも計画が上手くいけば、嘘は減る。

俺がどこか卑屈なのは、金がないせいだ。金さえ手に入ればあとはなんとかなる。借金をチャラにして一からやり直せる。
心機一転、勉強して、公務員試験でも受けてみるか。

茜におやすみを言ってから、やかんに水を入れて火にかけた。カップ麺のフタを空けて準備万端、寝転がって天井を見つめた。

「……」

人も羨む真っ白な豪邸も、ドアの向こうは嘘が渦巻いて真っ黒だ。

あれが大人か?
ユウや茜も変わってくのか。いや、ユウはともかく、茜はおっとりしてて家庭的だから心配ない、いや心配だ。都会に蔓延る悪に染まらないように、俺が守ってやらなくちゃ。

で、俺のやってる事はどうなんだ。

「……ヤバいな、ははっ」

やかんから勢いよく湯気が上がり、俺はしょぼいディナー作りに取りかかった。
















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