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歪んだ鏡が割れる時
第1章 第一章
女性達が選んだジュエリーを、美波が手早く包装している。そこで私は、松岡が選んだ品も包んでくれるようにと頼んだ。

用があるふりをして白石に会計を任せ、松岡に会釈してから控室のドアを開けた。

胸の鼓動をなんとかしたい。

温くなったポットのお湯をグラスに注いで飲み干し、ため息と緊張を吐き出した。

──いや、君に

あの目が私にへばり付き、言い様のない不安が押し寄せてくる。

「水沢さん、松岡様がお帰りですよ」

ノックと同時に声がした。

「はい」

グラスについた口紅を指で消し、姿勢を正して部屋を出た。

松岡は、小さな紙袋を女性達に持たせ「先に車で待っていなさい」と、鍵を手渡していた。

「ありがとう。気に入ったものが見つかったらしいよ」

「こちらこそ、いつもありがとうございます」

私達は揃って頭を下げた。

「あぁそうだ、君はどうかな、こちらの二人にはフラれてしまったんだけど」

「え?」

「彼女ならきっと大丈夫ですよ、ねぇ、水沢さん」

白石は、成り行きが読めていない私の事など気に止めてもいない。

「心待ちにしていたコンサートのチケットなんだけどね、妻が行けなくなってしまって……」

「私達はほら、無理でしょう?だから、あなたならどうかなって」

「え、あの、私……」

突然の申し出と、白石の勢いに押され、私は言葉に詰まり、背中には汗が滲んだ。



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