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歪んだ鏡が割れる時
第2章 第二章
『大切なご亭主に知られたくなければ現金150万円用意しろ
9月2日(金) 午後12時30分
霧ヶ丘駅前 みどり公園のベンチに座って待て
現金と引き換えに証拠を全て渡す
必ず一人で来い』
暑さが衰える兆しはない。まっ昼間の公園に人影は少ない筈だ。
左手で書いた脅迫文は、子供の字みたいにバランスが悪く、大きさもばらばらで読み難い。これなら年齢も性別も分からない筈だ。
緑の油性ペンで書かれたこの異様な文字の羅列は、間違いないくあの女に恐怖を与えるだろう。
「亮さん、ちゃんと手袋してから書いた?」
「もちろん」
同封する写真は結局、ユウが撮った3枚に決まった。ラブホテル周辺のものと、コンビニの前で写したのものだ。
俺が必死に撮り貯めたものは、このアパートから撮影した事がばれる可能性があるとユウに指摘され、採用しなかった。
出来たばかりの脅迫状と写真を、ユウが持ってきた白い封筒に入れて封をする。
「よし」
「出来たね」
あの家の駐車場は空になったばかりだ。女は白い外車を優雅に乗りこなし、夕食の買い物にでも行ったんだろう。
まったく羨ましい生活だ。
あの人妻にはなんの恨みもないが、自分の犯している罪に向き合ってもらおう。
旦那の哀れな後ろ姿が目に浮かんだ。
「ねえ、あの女が帰ってくる前にポストに入れなきゃ」