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歪んだ鏡が割れる時
第2章 第二章
「そうだな」

俺が立ち上がると「待って亮さん、私が行く」と、ユウが封筒を持って立ち上がった。

「ダメだ、俺がやる」

「亮さん男の人だから、きっと怪しまれるよ。女の子の方が絶対怪しまれないから。ほら、外見て、人が歩いてるよ」

通りには、自転車に乗った買い物帰りの主婦や、下校する中学生の姿があった。

「ね、亮さんここに住んでるから、たぶんご近所さんに顔見られてるし、万が一“不審者“で通報されたら大変な事になっちゃうよ」

「ふ、不審者?」

「そう、学校からも不審者情報のメールが保護者に一斉送信されるんだよ」

そ、それはヤバい……。

「ちょっと行ってくるね」

「あ、ユウちゃん!」

ユウは素早く靴を履くと、ドアをバタンと閉じて、いつもの足音を響かせた。

俺は慌てて窓に駆け寄った。近くの学校から、5時を知らせる呑気なメロディが流れてきた。

人影が途絶えるのを待っているのか、少し間を置いてから小さな背中を確認した。一歩前に出て辺りを見渡し、ゆっくりと歩き出す。

今日は珍しくワンピースを着ていたから、「お、ユウちゃんが清楚な女の子に見える」とからかった俺。

「ホント、女って化けるよな……」

ポニーテールが揺れて、どこか楽しげに見える。

「あいつ、心臓に毛が生えてるな。手に持ってるの脅迫状だぞ」

こっちは心臓の毛をむしり取られる気分なのに。



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