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歪んだ鏡が割れる時
第2章 第二章
芝生に挟まれた白い道を、ユウは堂々と進んで行く。庭にあるテーブルや椅子に目を向け、ポストの前まで行って足を止めた。

「そこだ、ユウ、早く入れて戻って来い」

そのデカ過ぎる家に見とれたのか、圧倒されたのか、ユウはぽかんと上を見上げたまま動かなくなった。

「なにやってんだ……」

俺は焦り、ユウの携帯電話に空メールを送って合図した。ただでさえ暑いのに、手のひらと背中に余計な汗が滲む。

着信に気付いたらしいユウが、ポストに封筒を納めるのが見えた。

後退りしながらまた家を眺めている。
道を行く中学生達の笑い声に振り向き、そのままこっちに戻って来る。

窓から見ている俺に気付くと、コクリと頷いた。
ユウは落ち着いていた。俺なら走って戻るところだ。

階段を上がる足音が聴こえてドアか開いた。

「任務完了しました」

敬礼したユウの声は明るい。

「ありがとう、大丈夫だった?」

「ぜんぜん平気。やっぱりお金持ちは違うねー」

「そうだよな。俺達貧困層」

出窓から2人であの家を眺めた。

「ユウちゃん、あの家の表札見た?」

「え?」

「ここからじゃ、カメラでズームしても表札が見辛くてさ。名字ぐらい知っておかないとね」

ユウが微笑む。

「そうだよね。もちろん見たよ」

「なんて名前だった?」

「……松岡」

「松岡か……、よし、覚えておこう」

豪邸の持ち主の名前を初めて知った俺。




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