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歪んだ鏡が割れる時
第2章 第二章
「なんで?なんで旦那がこんなに早く帰って来るんだよ」

「わかんない」

車を降り、ゆったりとした動きで愛車を後にする男。

「や、やばい。旦那に見つかったら何もかも水の泡……」

「ポスト、見ないかもしれないよ」

「そ、そうだな」

俺達は、男の歩みがポストを通り過ぎる事を願った。

日は傾き始めていた。足元から後ろに伸びた長い影が、巨大な家の影に吸い込まれていく。

「止まるなよ、そのままドアまで歩け」

俺は拳を強く握って祈った。

「頼む、そのまま行ってくれ……」

男はポストを過ぎてドアの前に立った。ポケットを探った後、ドアに手を伸ばした。

「早く中に入れ」

「あっ……」

「やば……」

普段やらない事をふと思い出した男は、何の感情も持たずに振り向き、禁断の箱と化したポストを開けている。

顔を見合わせ目を丸くする俺達。
再び視線を戻した時に見たのは、やつがドアを開けたまま、宛名のない真っ白な封筒を開封するところだった。

まずい。

「やめろ……」

今すぐここを飛び出してやつの手から奪い取りたい。

写真を捲っている。

男が振り向き、俺達はしゃがみ込む。

「ユウちゃん」

「なあに?」

「失敗した」

「……」

「旦那にバレた」

「うん」

手が震え出した。


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