この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
歪んだ鏡が割れる時
第3章 第三章
「うむ、久しぶりだね。元気だったかな?」

何も変わらない温かな口調が胸に響いた。その瞳には、穏やかな色しか見えなかった。

「はい、お陰さまで」

「ちょっと彼女にプレゼントしたいんだけどね、遠慮ばかりして困ってるんだよ。似合いそうな物を選んでくれないかな」

「浩之さん、お高いものは私、必要ないんですよ」

困った様子で松岡を見上げたその人は、確かに今、浩之さんと呼んだ。

「まあいいから、この人に手伝ってもらって、記念に何か一つ持つといい」

「……はい」

僅かに赤みがさした頬を私に向け、「お願いします」と小さく微笑む。

高く結い上げた髪は面長な彼女に良く似合い、細い眉とさほど大きくはない目が、かえって大人の色気を感じさせる。

草木染の紬はやがて来る秋を匂わせ、同系色で濃い色合いの帯が、着物を上品に引き立てていた。

「では、こちらに指輪などございますので、ご案内させて……」

「あ、ちょっと待ってください」

松岡の胸に両手を当てて自分に向き合わせ、ネクタイに手を伸ばした。

「また歪んでますよ」

「あぁ、すまない」

彼女はネクタイを、彼は、彼女を見ていた。

見ないで……。

「あの、指輪より私、イヤリングがいいんです」

「あ、はい、かしこまりました。ピアスはなさらないんですね」

「えぇ、怖くって、ふふっ、今時変でしょう?」




/195ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ