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歪んだ鏡が割れる時
第3章 第三章
「いいえそんなこと。では、こちらに」
ゆったりとした口調に巻き込まれそうだった。
「浩之さん、少し待っていてくださいね」
彼女が振り向いた。
「あぁ、ここ待ってる」
お願い、見つめ合わないで……。
他に客はいない。
白石が松岡と談笑している声を背中で聞き、私はショーケースの商品をいくつか手に取りながら、彼女の好みそうな物を探した。
「派手なものは好きじゃないんです、似合わないので」
「そんなことないと思いますよ。
そうですね、普段使いにも、改まった席でもお使いになりたいのでしたら、こちらはいかがですか?」
「まあ、素敵」
それは、7ミリのアコヤ真珠に、18金を素材にした小さなダイヤモンドを纏わせたもので、派手になり過ぎない光沢をたたえていた。
「奥行きのある輝きが印象的ですし、お顔も映えると思います。こちらにどうぞ」
鏡の前で商品を耳にあて、更に試着してもらうと、表情がパッと明るくなった。宝石を身に付けて嬉しくない女性はいない。
「とてもお似合いです」
「きっと物が良いからだわ。でも私にはもったいない。さんざんお世話になってきたのにこんなことまで……」
「……記念に、とおっしゃっていましたね」
その言葉が気になっていた。
「え、えぇ、あの方とお目に掛かれるのは今日が最後なんです。田舎に、金沢の母の元に帰る事になりまして」
ゆったりとした口調に巻き込まれそうだった。
「浩之さん、少し待っていてくださいね」
彼女が振り向いた。
「あぁ、ここ待ってる」
お願い、見つめ合わないで……。
他に客はいない。
白石が松岡と談笑している声を背中で聞き、私はショーケースの商品をいくつか手に取りながら、彼女の好みそうな物を探した。
「派手なものは好きじゃないんです、似合わないので」
「そんなことないと思いますよ。
そうですね、普段使いにも、改まった席でもお使いになりたいのでしたら、こちらはいかがですか?」
「まあ、素敵」
それは、7ミリのアコヤ真珠に、18金を素材にした小さなダイヤモンドを纏わせたもので、派手になり過ぎない光沢をたたえていた。
「奥行きのある輝きが印象的ですし、お顔も映えると思います。こちらにどうぞ」
鏡の前で商品を耳にあて、更に試着してもらうと、表情がパッと明るくなった。宝石を身に付けて嬉しくない女性はいない。
「とてもお似合いです」
「きっと物が良いからだわ。でも私にはもったいない。さんざんお世話になってきたのにこんなことまで……」
「……記念に、とおっしゃっていましたね」
その言葉が気になっていた。
「え、えぇ、あの方とお目に掛かれるのは今日が最後なんです。田舎に、金沢の母の元に帰る事になりまして」