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歪んだ鏡が割れる時
第3章 第三章
小さな箱に金色の細いリボンを掛けるつもりが、手が震えてなかなかうまくいかず、あきらめてシールのリボンをつけた。
「あ、リボン掛けが得意な透子さんが、珍しいですね。ま、私なんていつもシールですけどね、えへっ」
目ざとい美波に笑いかける。
「綺麗な女性についどきどきしちゃて」
「ホント素敵ですよね。聞きました?今日でお別れって。最後の熱い夜ですよねきっと。あぁ、松岡様も、ただの男でしたね。でもあんな女性なら、誰でも愛人にしたくなりますよね」
妄想たくましい美波のはしゃぎ様が、抑えている私の感情を逆なでしていた。
「お待たせしました」
包みを入れた手提げを松岡に渡す時、触れた指先に焦り、慌てて手を引っ込めてしまった。
「……ありがとう、助かったよ。紗江さん、これ」
「ありがとうございます」
両手で受け取り、丁寧にお辞儀をする紗江という女。
「じゃあ、行こうか」
「はい」
──また来るよ
「ありがとうございました」
三人そろって頭を下げた。
──また来るよ
私達の約束の言葉は?
痺れるような、あの眼差しは?
遠くなる二人の背中を見つめていた。
どうして彼女の事は、そんなに温かく見つめるの?
その人の背中に触れないで、その人を特別な目で見ないで、お願い、その人を……抱かないで……。
「あ、リボン掛けが得意な透子さんが、珍しいですね。ま、私なんていつもシールですけどね、えへっ」
目ざとい美波に笑いかける。
「綺麗な女性についどきどきしちゃて」
「ホント素敵ですよね。聞きました?今日でお別れって。最後の熱い夜ですよねきっと。あぁ、松岡様も、ただの男でしたね。でもあんな女性なら、誰でも愛人にしたくなりますよね」
妄想たくましい美波のはしゃぎ様が、抑えている私の感情を逆なでしていた。
「お待たせしました」
包みを入れた手提げを松岡に渡す時、触れた指先に焦り、慌てて手を引っ込めてしまった。
「……ありがとう、助かったよ。紗江さん、これ」
「ありがとうございます」
両手で受け取り、丁寧にお辞儀をする紗江という女。
「じゃあ、行こうか」
「はい」
──また来るよ
「ありがとうございました」
三人そろって頭を下げた。
──また来るよ
私達の約束の言葉は?
痺れるような、あの眼差しは?
遠くなる二人の背中を見つめていた。
どうして彼女の事は、そんなに温かく見つめるの?
その人の背中に触れないで、その人を特別な目で見ないで、お願い、その人を……抱かないで……。