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歪んだ鏡が割れる時
第3章 第三章
「お礼が言えて良かったわ。おまけに良いものをお買い上げ頂けたし。さあ、閉店時間よ」

「はーい」

ショーケースの施錠と、在庫の点検を怠らないよう、白石が店内を見回っている。
私はどうにもならない気持ちを抱え、レジの集計を始めた。あの二人が見つめ合う姿ばかりが目に浮かぶ。

「透子さん、今、携帯鳴ったみたいでしたけど、メールじゃないですか?」

「えっ?」

ポケットから携帯電話を取り出した。

「あ……」

「ほらやっばり。私、耳イイんですよ」

「……」


──どうしたんだ透子、君らしくもない
彼女は帰した
今、地下2階の駐車場にいる
5分経ったら私は帰る
君が決めなさい
返信はいらない


「透子さん、どうかしましたか?」

私はいつでも、自分の最善を選択して生きてきた。進学も、就職も、慎重に見極め……

「えぇ、ちょっと」

結婚の対象となり得る男性だけを選んで交際し、後悔しないよう、雅人を選んだ。

「店長、あの……」

「どうしたの?」

必要な資格を取り、好きな仕事に専念し、

「じつは、夫から連絡があって、仕事中に具合が悪くなって早退したらしいんです」

「まあ、大丈夫?ここはいいから、すぐに帰りなさい」

「そうですよ、こっちは任せてください」

思い描いた通りの、順調で堅実な生活を送ってきた。

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