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歪んだ鏡が割れる時
第3章 第三章
「なぜそんな事が言えるんですか?」
唐突な愛の言葉に怖気づいた私が、反撃を試みる。
「なぜ?」
「同じ事を誓い合った筈の相手と、生活を共にしているのに」
「ふふっ、一時の思い込み、皆それに縛られているだけだよ」
思い込み?
私の結婚生活も、そうなのだろうか。
「もし君がこうして傍に来てくれなくても、私の気持ちは変わらない。今日のように、時々顔を見に店に立ち寄ったりはするだろう。以前と変わらない関係が続くだけだとしても、それはそれで仕方ない、切なく君を想うのみさ」
心に浮かんだのは、紗江の愛し方だった。
「でも君は今、私といる。寸暇を惜しんで、愛欲を満たそうとしている」
罪深さを知らしめる為の言葉も、彼の声を通すと、淫靡さを伴ってじわりと子宮を刺激する。私は口をつぐむしかなくなり、切なさの混じった熱いため息を押し出した。
身体を重ね、罪を重ね、欲に溺れるのが愛だろうか。成就しなかった紗江の愛の方が余程……。
とりとめのない事を思い浮かべては、早く触れて欲しいという欲望が顔を出す。
昨夜の夫との情交を、私はまだ処理できずにいた。
この人を忘れたいと願っていた私が、今は昨夜の事を忘れたいと願う。
こんなふしだらな事を、平気で行おうとする自分に気付いていながら歯止めがきかない。
のろのろと進む車が赤信号で停まった時、彼の携帯電話が沈黙を破った。
唐突な愛の言葉に怖気づいた私が、反撃を試みる。
「なぜ?」
「同じ事を誓い合った筈の相手と、生活を共にしているのに」
「ふふっ、一時の思い込み、皆それに縛られているだけだよ」
思い込み?
私の結婚生活も、そうなのだろうか。
「もし君がこうして傍に来てくれなくても、私の気持ちは変わらない。今日のように、時々顔を見に店に立ち寄ったりはするだろう。以前と変わらない関係が続くだけだとしても、それはそれで仕方ない、切なく君を想うのみさ」
心に浮かんだのは、紗江の愛し方だった。
「でも君は今、私といる。寸暇を惜しんで、愛欲を満たそうとしている」
罪深さを知らしめる為の言葉も、彼の声を通すと、淫靡さを伴ってじわりと子宮を刺激する。私は口をつぐむしかなくなり、切なさの混じった熱いため息を押し出した。
身体を重ね、罪を重ね、欲に溺れるのが愛だろうか。成就しなかった紗江の愛の方が余程……。
とりとめのない事を思い浮かべては、早く触れて欲しいという欲望が顔を出す。
昨夜の夫との情交を、私はまだ処理できずにいた。
この人を忘れたいと願っていた私が、今は昨夜の事を忘れたいと願う。
こんなふしだらな事を、平気で行おうとする自分に気付いていながら歯止めがきかない。
のろのろと進む車が赤信号で停まった時、彼の携帯電話が沈黙を破った。