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歪んだ鏡が割れる時
第3章 第三章
そのうち終わりが来る、いつかは終わりにしなければならない。しかもそれは、誰にも知られないうちにひっそりと。

伏せておくべき関係が、白日の下にさらされたとたん、それまでの平穏は無くなり、周囲を巻き込んで泥沼に沈んでいく。
それは一つの例外もなく、私が見聞きしてきた事だった。

「彼は、誰よりも私を愛してくれてるって信じられるわ」と自慢げに語っていた友人は、相手の家族に知られた途端、一切の連絡を絶たれた。
また、美波の幼馴染の女性は、不倫相手の妻が女性の会社に乗り込み、慰謝料を請求され、会社にいられなくなったという。男は離婚したものの、元妻への慰謝料、幼い子供達への養育費と住宅ローンの返済に追われ、形の上では自由になった二人の関係は間もなく終わった。

そんな現実を目の当たりにするまで、不確かな愛にすがりつくのは、寂しさを埋めてくれるからだろうか。
自己陶酔にひたっていられる幸せ、隠しているからこそ保たれる関係。


──透子、彼は眠ってしまったかな?
近くにいる、顔が見たい

そんな悪魔の囁きに耳を塞げなくなっている私は、夫の寝息を確認し、深夜二時にベッドを抜け出す。外気で冷たくなっていく頬を、彼に温めて貰う為に。

熱に浮かされたように、時を惜しんで情事にふける二人を、暗闇が隠した。

「あぁ……そこ、そこ、あぁ、あぁっ……」

二人の熱い吐息で、車のフロントガラスがくもる。


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