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お礼の時効
第7章 まだ春季の心にあの男がいる
自分の中にあれほど凶暴な獣が居たとは思わなかった。
春季を侮辱した男に対して抱いた怒りの感情よりも荒々しい。

あの男をまだ心のどこかで思っているのかも知れない。
だから春季は泣いていたと考えると苦しくなった。

春季を優しく愛したいのに、どうしてかあの男の姿がちらついて、その男を彼女の中から追い出すように手ひどく扱ってしまっていた。腕の中で泣き乱れる春季の姿に煽られたが、同時にこの姿と声をあの男も知っていると思った瞬間狂いだした。

春季の首に噛みついて、そこを舐めあげ吸いつくと、春季の体は震えていた。
やめてと懇願する春季の声を聞いた瞬間、苛立ちを抑えきれなかった。
何度も何度も赤い痕を残し、同じくらい春季の中に自分の種を残した。
抱きあえば互いの体温を分け合い心は満たされると思っていた。
だけど昨日のそれは満たされるどころか、ますます飢えはひどくなる。
まるで海水を飲んでるような錯覚を覚えた。春季の体を抱けば抱くほど、もっと欲しくなる。

この不安はなんに対しての不安なのか、自分でさえわからない。
あの男に対して抱いた激しい感情がなんなのか、わからない。

まるで迷路のようだ、出口が見つからない。

このままこんな感情を抱いたまま春季の側に居ると、傷つけてしまいそうだ……。

しばらく帰らない方が良いかもしれない。

和臣は執務室の窓の外を眺めていた。
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