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お礼の時効
第8章 一緒に暮らしましょう

翌日事務所に出勤すると、アシスタントをしている新米弁護士から春季は尋ねられた。
その内容に春季は困り果ててしまい、詳しく話を聞こうと小さな会議室に向かった。
「時任弁護士が浅野検事と同棲しているから、事務所を辞めると聞きました。自分は別に関係ないと思うんですよ。同じ事件に関わらなければ問題はないじゃないですか!」
「半月前に同じ事件に関わったわ。あれは不起訴で済んだけど、あれだって下手したら疑いを持たれることになるわ」
「でも……」
「それに多分このまま一緒に暮らすことになるから、まわりに気を遣わせたくないし、なによりそのことで依頼人に迷惑を掛けたくないの。私たちがなすべき事は依頼人を守ることであって迷惑を掛けることじゃないはずだわ、違うかしら」
「なら、時任弁護士が辞めなくても、例えば民事の方へ移るとか……」
「知り合いから誘われた所は定時で帰れるし、そろそろこんな働き方を続けるのも限界なのよ。だって二人とも遅い時間でないと帰れないんだもの」
和臣から「一緒に暮らそう」といわれた春季は、『住む』と『暮らす』の違いを調べ、ようやくその意味を知った。
『住む』はその場所で生活することで、『暮らす』は生活そのものを指した。そしてある期間の終わりまで過ごすことも。
つまり、和臣なりのプロポーズの言葉だと春季は思い、彼らしいと口元を緩ませた。
しかし、それを「自分がノートを貸したお礼」とさらりと言ってのけるあたりが可愛く思えてしまう。
一途な和臣らしい、知らぬうちに自分の心を捉えている男に想いを馳せた。
ならば迷うことなどない、和臣が差し出した手を取ればいい。
それに自分の気持ちに気づいた今となっては迷いはなかった。
「とにかく、私は今の公判が終わり次第辞めるから、あとは頑張りなさいよ」
泣きそうな顔の新米弁護士を春季は励ました。
その内容に春季は困り果ててしまい、詳しく話を聞こうと小さな会議室に向かった。
「時任弁護士が浅野検事と同棲しているから、事務所を辞めると聞きました。自分は別に関係ないと思うんですよ。同じ事件に関わらなければ問題はないじゃないですか!」
「半月前に同じ事件に関わったわ。あれは不起訴で済んだけど、あれだって下手したら疑いを持たれることになるわ」
「でも……」
「それに多分このまま一緒に暮らすことになるから、まわりに気を遣わせたくないし、なによりそのことで依頼人に迷惑を掛けたくないの。私たちがなすべき事は依頼人を守ることであって迷惑を掛けることじゃないはずだわ、違うかしら」
「なら、時任弁護士が辞めなくても、例えば民事の方へ移るとか……」
「知り合いから誘われた所は定時で帰れるし、そろそろこんな働き方を続けるのも限界なのよ。だって二人とも遅い時間でないと帰れないんだもの」
和臣から「一緒に暮らそう」といわれた春季は、『住む』と『暮らす』の違いを調べ、ようやくその意味を知った。
『住む』はその場所で生活することで、『暮らす』は生活そのものを指した。そしてある期間の終わりまで過ごすことも。
つまり、和臣なりのプロポーズの言葉だと春季は思い、彼らしいと口元を緩ませた。
しかし、それを「自分がノートを貸したお礼」とさらりと言ってのけるあたりが可愛く思えてしまう。
一途な和臣らしい、知らぬうちに自分の心を捉えている男に想いを馳せた。
ならば迷うことなどない、和臣が差し出した手を取ればいい。
それに自分の気持ちに気づいた今となっては迷いはなかった。
「とにかく、私は今の公判が終わり次第辞めるから、あとは頑張りなさいよ」
泣きそうな顔の新米弁護士を春季は励ました。

