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お礼の時効
第9章 私と結婚してください
 その日の昼に祥子と待ち合わせ、レストランの個室で食事を取った。祥子はここ数日忙しかったようで、以前あったときよりも顔色が悪い。
 そのことを告げると現在進めている仕事が佳境を迎え、これからが正念場だと苦笑いしていた。

「で、どうしたの? 春季、なにかあったの?」

 気の置けない友人は、いつも自分のことより他人の心配ばかりする。恐らく以前転職の話をしたときから、自分になにかあったのではないかと心配していることは容易に想像がついた。

 水を一口含み結婚することを告げると、みるみるうちに祥子は顔を綻ばせた。

「お相手はどんな男性なの? 教えなさいよ、春季!」

 弾む声で祥子は尋ねてきた。ここでふと思う。そういえば彼女も同じ大学だ、もしかしたら和臣のことを知っているかも知れないと。

「同じ法学部だった浅野さんよ。現在は地検で働いているわ」
「あら、ある意味敵対しているようなものよね。だから刑事を下りたの?」
「まあ、それもあるけどそろそろ無理な働き方もできないなと思ってね。ところで祥子、祥子は浅野さんのことをおぼえている?」

 祥子はしばし黙考し、首を横に振った。
 法学部だった自分や和臣と違い、祥子は経済学部で学部が違うとやはりわからないだろう。
 春季がそんなことを考えていると、祥子が何かを思い出したようで、ああと口に出した。

「記憶違いかも知れないけど、もしかしたらあの浅野さんかしら。確か、彼は入学式の挨拶をしたわ。私と同じ学部のコが彼をひと目で好きになって、よく相談をされていたわ」
「で、そのコはその後どうしたの?」
「告白したけどダメだったの。好きな人が居るからってね」

 思いがけず自分が知らない和臣の過去に触れて、春季は動揺した。
 和臣が大学時代から自分を思っていたことは聞かされていたが、自分が知るよしのない話を聞かされ、春季は胸がじんとなった。

 祥子の友人が断られた理由は自分がいたからで、優越感を感じながらも、祥子の友人に申し訳ない気持ちになる。
 もう昔のことなのに、ずっと自分を想い続けた和臣に愛おしさを感じた。

 その後祥子と他愛ない話をしながら食事を済ませ、春季は事務所に戻り残務整理を続けた。
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