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お礼の時効
第2章 今ならあなたに言える、愛してますと

詩織は窓のそばでたたずんでいる浅野の姿を横目に、パソコンで調書の誤字脱字をチェックしていた。
窓の外を眺めているのかも分からない、ぼんやりしながらため息をつく、これで今日は5回目だ。
「浅野検事、そろそろ次の取調べの時間になりますよ、いい加減仕事してください」
詩織の言葉が聞こえていないのだろうか、身じろぎせずにまたため息をついた、6回目。
朝からこんな腑抜けな浅野を姿を見続けてもう一ヶ月になる、いい加減そろそろいつもの浅野になってくれないと困る。
「浅野検事? 聞こえてますか? 帰ってきてください!」
「あ、ああ。すみません、羽田さん」
詩織の大きな声に驚いたのか、浅野は体をびくりと震わせ、のろのろと机の椅子に腰をかけ、肘をついて顔を覆っている。またため息、これでもう7回目だ。
羽田 詩織(はねだ しおり)は検察事務官で、浅野の業務の補助を2年働勤めていた。
主な仕事は、取り調べに同席し、取り調べ中に検事に書類を渡したり、検事が調書内容を口述するのをパソコンで打ち込むなど検事をサポートする仕事だった。
見かけは楚々とした印象の詩織だが、その実意外に度胸があり上司である浅野に対しても率直な意見を述べるほどであった。
常に浅野と行動を共にしているのだが、この一ヶ月の浅野の腑抜けっぷりに詩織は頭を抱えていた。
一ヶ月前に送検されたある事件の担当弁護士が決まったと浅野に伝えると、その名前を聞いた浅野の顔色が変わった。
普段滅多なことでは表情を変えない浅野が、このとき見せた狼狽えぶりは詩織を驚かせたほどだ。
その直後、その担当弁護士から面会を求められ、約束の日時を交わしたあとの浅野の様子は見ていられなかった。
電話を置いてしばらくぼうっとし、その後机に突っ伏し盛大なため息をついていた。
そして面会の日の朝の、あの落ち着かない様子はまるで初めてのデートにいく中学生のように詩織には見えた。
その姿に不安を感じたが、その弁護士と面会のときは持ち直していたようで、詩織は胸を撫で下ろしていた。
窓の外を眺めているのかも分からない、ぼんやりしながらため息をつく、これで今日は5回目だ。
「浅野検事、そろそろ次の取調べの時間になりますよ、いい加減仕事してください」
詩織の言葉が聞こえていないのだろうか、身じろぎせずにまたため息をついた、6回目。
朝からこんな腑抜けな浅野を姿を見続けてもう一ヶ月になる、いい加減そろそろいつもの浅野になってくれないと困る。
「浅野検事? 聞こえてますか? 帰ってきてください!」
「あ、ああ。すみません、羽田さん」
詩織の大きな声に驚いたのか、浅野は体をびくりと震わせ、のろのろと机の椅子に腰をかけ、肘をついて顔を覆っている。またため息、これでもう7回目だ。
羽田 詩織(はねだ しおり)は検察事務官で、浅野の業務の補助を2年働勤めていた。
主な仕事は、取り調べに同席し、取り調べ中に検事に書類を渡したり、検事が調書内容を口述するのをパソコンで打ち込むなど検事をサポートする仕事だった。
見かけは楚々とした印象の詩織だが、その実意外に度胸があり上司である浅野に対しても率直な意見を述べるほどであった。
常に浅野と行動を共にしているのだが、この一ヶ月の浅野の腑抜けっぷりに詩織は頭を抱えていた。
一ヶ月前に送検されたある事件の担当弁護士が決まったと浅野に伝えると、その名前を聞いた浅野の顔色が変わった。
普段滅多なことでは表情を変えない浅野が、このとき見せた狼狽えぶりは詩織を驚かせたほどだ。
その直後、その担当弁護士から面会を求められ、約束の日時を交わしたあとの浅野の様子は見ていられなかった。
電話を置いてしばらくぼうっとし、その後机に突っ伏し盛大なため息をついていた。
そして面会の日の朝の、あの落ち着かない様子はまるで初めてのデートにいく中学生のように詩織には見えた。
その姿に不安を感じたが、その弁護士と面会のときは持ち直していたようで、詩織は胸を撫で下ろしていた。

