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幸せの時効
第9章 決断
 天気の良い日曜日、そこへ向かう。
 電車を乗り継いでホスピスに向かうと、施設の庭で一人静に本を読んでいた湯島を見つけた。

「見つけたわよ、湯島先生……」

 湯島は驚いた顔で私を見ていた。

「なぜ……来た?」

 私は彼に近づき、渾身の一撃を食らわせた。
 湯島の顔は思い切り横を向いて、彼は呆然としていた。

「ふざけるのもいい加減にしなさいよ。悲劇の主人公にでもなったつもり? お前の幸せを願ってるって、自分の不幸に巻き込んだくせに笑わせないで!」

 一気にまくし立てた。湯島は呆然となった顔で私の顔を見ていた。

「何の病気なのよ……」
「……大腸がん。あと1年もつかどうからしい」
「どこの病院に診て貰ってたの?」
「うちの……」
「あなたのとこのドクターは信用出来ないわ」

 私は自分が卒業した医学部の教授に連絡し、大腸がんを専門に研究しているドクターを紹介してもらった。そこで改めて検査を行い、外科的なアプローチを踏まえた療養計画をたてて貰うことにした。

「これで一つ気が済んだわ。あと一つ、あなたは私を愛しているのでしょう? 私もあなたを愛しているの。わかるわよね?」
「……ああ」
「あなたの奥さんはどうしたいのか聞いたの?」
「妻は俺と会いたくないそうだ。子供とも会わせて貰えない」
「ならあなたは捨てられたのよ。私が拾うわ」
「ゆず……。お前なあ……」
「何よ! だいたいね、子供が作れないからと他の男を受け入れた時点であなたは捨てられたのよ、わからないの?」

 いくら子供が欲しいからと、その人以外の体を受け入れるなんて私には理解できない。女の体と心は愛する男にだけ反応するのだから。いくら妊娠が必然的なものだとしても、あれは奇跡なのだ。その奇跡を否定するような湯島の妻の行動は許せない、人としても医師としても女としても。

「だから、私があなたの子供産んであげる」
「ゆず? お前何言ってるんだ?」
「あなたの精子核さえあれば、今なら何とでもなるわ。あとは確率の問題だから。あなた私が医師でもあること忘れてるわよね」

 湯島は口をパクパクさせて、私を見ていた。

「と言うわけで、帰りましょ」
「はあ?」
「退所手続きは済んだわ」

 私は湯島の退所手続きの紙をヒラヒラさせた。
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