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幸せの時効
第4章 逡巡

それからしばらくいつも通りの毎日が続いた。心穏やかに過ごせる日々は、今の私にとってかけがえのないものだ。時間ができると春季と食事をし、日々膨らむ彼女のお腹を愛でるように撫でていた。
幸せな結婚をした彼女は、過去に手痛い失恋をした。それを引き摺り出会いがあったにもかかわらず仕事にのめり込みすべてを遠ざけていた。そんな彼女の心を暖かく包んだ浅野検事は、大学時代から彼女に憧れ、ようやく想いを遂げた。そして今新しい命が二人の間に舞い降りようとしている。羨ましさを感じた。
「やっと安定期にはいったから、年末に向こうに行ったら教えるつもり」
「函館だっけ? そろそろ帰ってくる頃でしょう?」
「ええ、もう2年だからこちらに帰ってくるとは思うけど、またしばらく行くんじゃないかしら」
「そのうち検事を辞めるとか言い出しそうよね」
「結婚するとき、真面目な顔で検事を辞めると言っていたからあり得なくないわ。2年か3年のサイクルなのだから異動のたびに説得しなきゃ」
どうやら函館に異動が決まったときすったもんだがあったようだ。私は想像し、つい噴き出してしまった。
「まあ、彼はいつも春季の側にいたいのだから。仕方がないわ。それこそあなたの役目なんだから説得頑張りなさいよ」
「もっとこう大人だと思っていたのが、いきなり子供じみた行動をするから困るわ。大きな子供に話しているような気になるの」
的確な例えにまた噴き出してしまった。普段の冷静な彼の姿から想像できない。どうやらここは春季の天下のようだ。そういえば、湯島もそうだった。大人の男だと思っていたら、まるで子供のように拗ねたり、甘えたり。35才の大の男が19才の小娘に甘えるのはどんなものだろう。
「ゆず、また考えるのね。彼のこと」
ぎくりとした。やはり春季の目はごまかせない。
「いいえ、あなたのステキな旦那様の普段を想像してたのよ」
「和臣の? 一度だけ執務中の姿を見たけど、あれからは想像つかないわ」
うまくはぐらかすことが出来てほっとした。
幸せな結婚をした彼女は、過去に手痛い失恋をした。それを引き摺り出会いがあったにもかかわらず仕事にのめり込みすべてを遠ざけていた。そんな彼女の心を暖かく包んだ浅野検事は、大学時代から彼女に憧れ、ようやく想いを遂げた。そして今新しい命が二人の間に舞い降りようとしている。羨ましさを感じた。
「やっと安定期にはいったから、年末に向こうに行ったら教えるつもり」
「函館だっけ? そろそろ帰ってくる頃でしょう?」
「ええ、もう2年だからこちらに帰ってくるとは思うけど、またしばらく行くんじゃないかしら」
「そのうち検事を辞めるとか言い出しそうよね」
「結婚するとき、真面目な顔で検事を辞めると言っていたからあり得なくないわ。2年か3年のサイクルなのだから異動のたびに説得しなきゃ」
どうやら函館に異動が決まったときすったもんだがあったようだ。私は想像し、つい噴き出してしまった。
「まあ、彼はいつも春季の側にいたいのだから。仕方がないわ。それこそあなたの役目なんだから説得頑張りなさいよ」
「もっとこう大人だと思っていたのが、いきなり子供じみた行動をするから困るわ。大きな子供に話しているような気になるの」
的確な例えにまた噴き出してしまった。普段の冷静な彼の姿から想像できない。どうやらここは春季の天下のようだ。そういえば、湯島もそうだった。大人の男だと思っていたら、まるで子供のように拗ねたり、甘えたり。35才の大の男が19才の小娘に甘えるのはどんなものだろう。
「ゆず、また考えるのね。彼のこと」
ぎくりとした。やはり春季の目はごまかせない。
「いいえ、あなたのステキな旦那様の普段を想像してたのよ」
「和臣の? 一度だけ執務中の姿を見たけど、あれからは想像つかないわ」
うまくはぐらかすことが出来てほっとした。

