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小田桐菜津子と七つの情事
第5章 五人目の戸惑い
ぼくは手元にスマホを握りしめていたことに気づいた。
彼女の指示に従うほかない、と思った。
理性を超えて、圧倒的な命令を、繰り人形のようにこなすことしか出来ない自分に気づいていた。
スリープ状態のスマホを起こし、既に立ち上がっていたLINEの友達登録画面を開き、『ふるふる』のボタンを押した。
彼女のほうを一瞬見る。
彼女はスマホを振り始めた。こちらも同じようにする。
スマホがブン、と震える。
「お友達登録申請」の表示。そこには「八朔」という表示。ぼくはそれを「OK」した。
その人との会話のタイムライン画面にメッセージが飛んでくる。
八朔:見えた?
矢上:
ぼくは、何と言っていいか分からず、返事をためらっていた。
八朔:見てたよね?
矢上:
「ha」と、キーをタイプした。予測変換列に「はい 歯 離す 葉」のワードが並ぶ。ぼくは一番最初のワードを選択した。
矢上:はい
八朔:見えたね?
矢上:はい…。すみません。そんなつもr
まで書いたところで、
八朔:何色だった?
とレスが来た。