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小田桐菜津子と七つの情事
第5章 五人目の戸惑い
ぼくはとぼとぼと部屋に入った。
ラブホテルならいざ知らず、こんなちゃんとしたホテルになんて入ったことがなかったけど、そのあまりの部屋の小ささに驚いた。大きなベッドをのぞけば、あとは小さなデスクとクロゼットらしき扉があるだけの部屋だった。
ジーンズの前を閉めて、とりあえず、ベッドに腰掛けた。
バスルームから水を流す音がして、彼女が出てきた。
「ゴメンねー」と、さっぱりした笑顔で彼女は言った。「さすがに飲んであげられなかったよ」
「そんな…そんなコト…」
彼女はぼくの隣に座った。
「やっと声を出して喋れるね」
ぼくの話を遮って、彼女は言った。ベッドサイドの冷房のスイッチを入れてから、こちらに向き直った。
そういえばそうだ。新幹線を降りてからは、必要最低限の事務的な会話しかしてなかった。
「気持ち…よかったんだね?」
ふふ、と笑みを浮かべながら尋ねられた。
ぼくはうなずくしかない。
彼女のぼくの耳元に唇を寄せ、耳の中に直接囁いた。
「もっと…気持ちイイコト…しよ」
耳の中に吹き込まれる息と、その後でやってきた柔らかな舌。東京のガールフレンドに時々してあげることはあっても、誰かにされたコトなんて…。
はっ…。
気持ちよくて、息を飲んでしまう。
「声を出してごらん…パートナーに、あなたの気持ちを伝えるのよ」