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小田桐菜津子と七つの情事
第6章 痛みを覚えた六人目
自分で言うのもなんだが、私は不細工な顔つきをしている。ひしゃげた丸顔にゴツい眼鏡。昔のアニメに出てくる浪人生みたいな風貌だ。
もっともその風貌のおかげで、不思議な人物達の役柄が途切れることなくやってくる。
また、この朴訥な喋り方も気に入られ、最近ではナレーションの仕事も増えてきた。
「こんな見た目で変態だなんて、ヒネリがなさすぎるって仲間は笑うんですけどね」
ふふ、と、小さく女は笑った。
「でもいいじゃないですか。大人になれば誰もがみんな、少しずつ変な部分を隠しもってますからね」
その言葉に初めて顔を上げて、この闖入者(ちんにゅうしゃ)の顔を見た。目を、覗き込んだ。その奥に、かすかな光を見た。
「はじめまして」と私は言った。「ーーと申します」
女は一拍戸惑ってから、微笑を取り戻し、返事を返した。「小田桐、と申します。突然お邪魔しまして申し訳ありません」
いい女だな、と思った。
見た目でなく。
そのこざっぱりとした物言いが、だ。
東京のあるメーカー勤務で、ここへは出張できていること。学会に出席した高名な大学教授の接待を、今まで下の階の懐石料理屋でしていたこと。その席がお開きとなり、このホテルにある部屋に戻る前にここで一杯、飲もうと思っていた。
続く数分の会話の中で、女はそんなことを喋った。