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小田桐菜津子と七つの情事
第6章 痛みを覚えた六人目
そして私を見て微笑し、
「新しいお酒を覚えました」
と言った。
その表情。心の隙間にスッと入り込む笑顔。鈍い瞳のきらめき。
ヤバいな。
ヤバい女かもしれないな、と思った。
やがて背の低いロックグラスにズブロッカが二杯注がれてやって来た。私も薄くなってしまった酒を交換してもらったのだ。
私たちはどちらともなくグラスを合わせ、小さく乾杯した。
口に含むと、途端に香る強い牧草の香り。それが何故だか日本人には、柏の葉に包まれた桜餅の香りを思い起こさせる。
「美味しい…」
酒をゆっくり味わいながら、女がそう言う。
「小田桐さん、でしたよね?」
私は女の名を呼んでみた。
女はこちらを見た。
まどろっこしいのは嫌だな、と。
「後で、部屋に来なさい。私の」