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小田桐菜津子と七つの情事
第6章 痛みを覚えた六人目

ドアがノックされた時、私は部屋の中で買い置きしておいた栗焼酎のボトルを開けるところだった。
四国の栗焼酎が札幌で手に入る幸運に、思わず買い求めた品だ。フロントに届けてもらった氷とグラス。封を切ると、かすかに香る甘い栗の香り。
それに目を細めた時、控えめなノックの音がした。

ドアまで歩き、のぞき窓を確認することもなく、扉を開けた。

女が、立っていた。
片脚に重心をかけ、わずかに傾いだ立ち姿。
笑むでもなく、泣くでもなく。
瞳だけを静かにきらめかせながら、唇を噛みしめていた。
良い雰囲気だった。

部屋に招き入れる。
ベッドサイドのライティングテーブルに、彼女を座らせる。

「飲むか?」

と、栗焼酎を顎でしゃくる。

「何を飲んでいらっしゃるの?」
「焼酎。和のスピリッツだ」
「何の香りかしら? 芋じゃないですよね?」
「栗」

あぁ、と女は言う。

「いただきます」

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