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小田桐菜津子と七つの情事
第7章 最後の情事

学生時代に知り合った時のまま、互いの呼び名をそのままに、長い友達時代が経て、我々が結婚して四年。

たがいに三十代に突入し、仕事も増え、たがいの社会ではそれなりの立場になった。
製薬会社のマーケティング担当である妻と、物理学者のぼく。

昔から、対外的なあれこれは、妻の方がぼくより遥かにやりくり上手だった。
ぼくはマイペースで自分の殻に閉じこもりがちで、なっちゃんに言わせれば、『学者になれなければ社会不適合者』だということになる。

それでもぼくら夫婦は、互いの足りないところを補い合い、それなりに楽しくやってきた。
稼ぎは外資系のなっちゃんの方が多かったけれど、彼女はそれを少しも鼻にかけることもなく、またぼくも(社会不適合者なりに)そのことは少しも気にならなかった。

勤務時間が出鱈目なぼくの仕事柄、家事は出来る時に出来る方がやる、ということになっており、たがいが多忙になると、我が家は下着さえもクリーニングに出すような状態になっていた。

同年代の子どもがいて、真っ当に暮らしている夫婦からすれば、ぼくらの暮らしはママゴトのように見えたかもしれない。
きっとぼくが院を卒業してからずっと同じキャンパスに通っているせいで、いつまでも大人になれないコトが原因なんだろう。

でも。
それでもぼくらにとってこの家庭は、かけがえのないホームだ。
ぼくらはここで一日の疲れを癒し、互いを慈しみ合い、静かに暮らしていた。
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