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小田桐菜津子と七つの情事
第7章 最後の情事
彼女はぼくより一つ年上の、既婚者だった。
ウチの研究所に働きにきてくれている派遣さんだ。我々社会不適合者の集まりは、研究以外のことは極端に事務処理能力が落ちる。そこを細かく救ってくれる、ウチの研究員の頼りになるお姉さんだった。
そんな絵里子さんが、ぼくに好意を持っていたのを知ったのは、研究所のサマーパーティの日のことだった。互いにほろ酔いで歩く道すがら、彼女はその気持ちをぼくに打ち明けてくれたのだった。
といっても、ウチの大学の学部生達がやっているような恋のさや当て的な熱いものではなく、今にして思えばそれは、SEXの相手を探す言い訳みたいなものだった。
絵里子さんはその日のうちにぼくとベッドに入ることになった。
最初はキチンとラブホテルを使っていたが、途中から徐々にぼくのマンションに来るようになっていった。
マズいな、と思った。
なっちゃんのことが頭をよぎる。
真面目な彼女にコレがバレたらかなり大変なことになるだろう、と思った。
でもなりより、ぼくは(さらには恐らく絵里子さんも)相手にさほど興味がなどなかったのだ。ぼくたちは純然たるセックスフレンドとして、インスタントな快楽をつかの間、味わえればそれで良かったのだった。いわば、相手のいるマスターベーションみたいなものだ。
ただ、それが事実だとしても、なっちゃんにそれが受け入れられるわけがない。それはよく分かっていた。だから深入りする前にキチンと手を切らなくてはと、ぼくはずっと考えていた。
しかしながらこういう関係が往々にしてそうなるように、我々はぐずぐずと別れるきっかけを見つけられないでいた。