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小田桐菜津子と七つの情事
第7章 最後の情事


このところ、妻の行方が分からないことがあった。
連絡を取らなくてもおおよそどこで何をしているかわかり合っていた時代を経て、今は互いがどこにいるか、報告し合わないとさっぱり分からない状態になっていた。
彼女がどこで何をしていたのかは分からない。もしかしたら恋人が出来たのか、とも思ったが、そうであるなら間違いなく、妻はぼくに離婚を切り出す。彼女はそういうひとだった。だから恋人ができたとか、そういうことでないのは分かっていた。
どこかの飲み屋にいるのか、それとも本当に仕事に追われているのか。
いずれにせよ、それを確かめたり咎(とが)めたりする権利はぼくにはなかった。

だから何も気づかない顔をして、知らぬ間にベッドに入り、隣で目覚めた彼女におはよう、と言い続けた。

彼女は浴衣を脱ぐ。
そしてぼくもまた、裸になった。
10月も末の伊豆の旅館の夜は、少し冷える。
だけど芯まで身体を温めてくれた温泉と、その後のアルコールは、ぼくたちを寒さから守ってくれてくれていた。

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