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小田桐菜津子と七つの情事
第1章 最初の情事
例えば、と言って彼女の左のかかとを手のひらに収め、少しだけひねる。
「あぁっ!」
「ね?」
それなりの痛みがあったはずだ。
身体をよじってそれから逃れようとする動きが見えた。
「痛くしないって言ったのに」彼女は笑いながらそう言った。
「すみません。見立てを確認したかったので。もう痛いのはしません」
『痛くないカイロプラクティック』の名のごとく、我々の流派では関節に負担をかけるような施術は一切行わない。ベッドにうつ伏せに寝ている彼女の脇にかがんで、両手のひらで腰のくぼみを押さえ、小さく揺らすのみだ。
この揺らしは、骨と筋肉を接続している《筋膜》と呼ばれる部位のこわばりをほぐし、身体の各部品の位置関係を正しい形にリセットすることを目的としている。まさに「整」える「体」というわけだ。