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よくある恋愛モノ 〜見えない心〜
第5章 仮初め
「いいえ、こちらこそ」
からかうような笑みで言われ、美和はまた赤くなる
「もうっ、龍青のばか!」
なんだかキュンとするような台詞を置いて美和は海に向かって駆け出した
「あ、美和!」
少し振り返ってべーと舌を出してはまた走ってゆく
龍青は思わずニヤリとして彼女を追い掛けた
すぐには追いつかないよう、わざとゆっくりと−−−
「!?」
波打ち際まで来たとき、突然美和がしゃがみこんだ
「美和!?」
急いで駆け寄って覗き込む
「大丈夫? どこか……」
バシャッ
「……」
顔に感じる冷たい滴りに、龍青は目を瞬いた
「引っ掛かったね!」
美和はいたずらっ子のように笑いながらまた水をかけてくる
「……みーわー」
龍青はわざと怒ったように唸ってから、負けじとさらに大量の水をぶっかけた
「ちょっと、凄い濡れちゃったじゃん!」
楽しそうに水をかけあう一組の男女
周囲の目にそれは仲の良いカップルに映っただろう
しかしそれは仮の姿−−−
想い合っているようで、本当の気持ちは偽られていた
それは本人たちさえ知らないことだが−−−