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桜の季節が巡っても~追憶~
第12章 朝帰りの出来事3
けれど。
お互い、何故かそれが出来ずに、ひとつのシートを分け合い、狭い空間で抱き合っていた。
店の真ん前に停めた車内でこんな事をしているものだから、先程から入退店をする人達がこちらを見ているのには、気付いていた。
普段の彼女ならそんな注目は耐えられない。
でも今は、何故か、構わなかった。
何れ腕が離れるその時まで、もう少しだけ、このままでいたかった。
泉夏は静かに口を開いた。
「…龍には本当に感謝してる。龍がいなければ、私と先生はあの時別れたまま終わるはずだった。それを龍が繋ぎ留めてくれた。感謝してもしきれない。ほんとに、ありがと」
「別に俺は、なんにもしてない。俺はただ、ホテルまでお前を連れて行っただけだ。その後(あと)お前たちが別れるか、上手くいくかは、俺の与(あずか)り知らないところだ」
お礼も感謝も何もいらないと口癖のように言う、龍貴らしい答えだった。
派手な外見。
大胆な行動。
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