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凍える月~吉之助の恋~
第8章 第三話 【初戀】 二
この伯父には市兵衛も幼い時分は可愛がって貰った。それゆえ、出来の悪い跡取りのゆく末を心配しながら亡くなった伯父の心中を汲み、渋々ながらもその身柄を京屋で預かったのだ。
だが、肝心の愼太郎は遠縁の店の若旦那であることを鼻に掛け、ろくに働きもせず遊びほうけてばかりだった。夜は夜で色町へ遊びに出掛け、連日のように朝帰りである。
二両が無くなった夜も番頭から必ず金庫の鍵をかけるようにと言いつけられていたにも拘わらず、馴染みの女に逢いたさに居ても立ってもおれず、丁稚に後始末を言いつけて夜の町へと飛び出していったのだ。その際、店の売上から一部を軍資金としてかすめ取った。大店の京屋のことだから、二両足りないほどでこんなに大事になるとは考えもしなかったのである。
だが、肝心の愼太郎は遠縁の店の若旦那であることを鼻に掛け、ろくに働きもせず遊びほうけてばかりだった。夜は夜で色町へ遊びに出掛け、連日のように朝帰りである。
二両が無くなった夜も番頭から必ず金庫の鍵をかけるようにと言いつけられていたにも拘わらず、馴染みの女に逢いたさに居ても立ってもおれず、丁稚に後始末を言いつけて夜の町へと飛び出していったのだ。その際、店の売上から一部を軍資金としてかすめ取った。大店の京屋のことだから、二両足りないほどでこんなに大事になるとは考えもしなかったのである。