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凍える月~吉之助の恋~
第8章 第三話 【初戀】 二
流石にそんな雰囲気を見て、手代の愼太郎も怖くなったらしい。自分がしでかした罪を着せられ、陽太がお縄になりでもしたらと思うと、怖ろしくて夜もおちおち眠られないほどになった。元々、小心な男なのだ。
怖くなった愼太郎は市兵衛に真相を申し出て、無くなった二両は陽太が鍵をかける前、自分があらかじめ盗んだのだと白状した。それを聞いた市兵衛は仰天した。てっきり、陽太が二両盗んだものだとばかり思い込んでいたのだ。愼太郎は確かに市兵衛が見ても、まるでやる気のない見込みのない若者だが、何しろ京屋から他家へ婿養子に行った伯父―市兵衛の父の弟―の忘れ形見である。
怖くなった愼太郎は市兵衛に真相を申し出て、無くなった二両は陽太が鍵をかける前、自分があらかじめ盗んだのだと白状した。それを聞いた市兵衛は仰天した。てっきり、陽太が二両盗んだものだとばかり思い込んでいたのだ。愼太郎は確かに市兵衛が見ても、まるでやる気のない見込みのない若者だが、何しろ京屋から他家へ婿養子に行った伯父―市兵衛の父の弟―の忘れ形見である。