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凍える月~吉之助の恋~
第9章 第三話 【初戀】 三
翌日の朝。
陽太は迎えにきた京屋の番頭と共に帰っていった。
今度、陽太に逢えるのはいつのことだろうか。お絹は太吉やおみのと共に長屋の前で陽太を見送った。
その日は目ざめたときから鈍色の空がひろがっていた。陽太の姿が番頭と共に木戸口を抜けその向こうへと消えた時、折しも雪が降り始めた。その年、江戸に初めて降る雪である。
はらりはらりと花びらのようにゆっくりと舞い降りる雪をかすめる鳥影が映じた。
ふと見上げると、鶴の群が整然と列をなして空を翔けていく。鶴の大群はすぐに烈しさを増してゆきつつある雪に吸い込まれるように消えた。
お絹は降りしきる雪の中、いつまでもその場に佇んでいた。
(第三話 【初戀】了 )
陽太は迎えにきた京屋の番頭と共に帰っていった。
今度、陽太に逢えるのはいつのことだろうか。お絹は太吉やおみのと共に長屋の前で陽太を見送った。
その日は目ざめたときから鈍色の空がひろがっていた。陽太の姿が番頭と共に木戸口を抜けその向こうへと消えた時、折しも雪が降り始めた。その年、江戸に初めて降る雪である。
はらりはらりと花びらのようにゆっくりと舞い降りる雪をかすめる鳥影が映じた。
ふと見上げると、鶴の群が整然と列をなして空を翔けていく。鶴の大群はすぐに烈しさを増してゆきつつある雪に吸い込まれるように消えた。
お絹は降りしきる雪の中、いつまでもその場に佇んでいた。
(第三話 【初戀】了 )