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凍える月~吉之助の恋~
第10章 第四話 【はまなすの子守唄】 一
【其の壱】
お絹はふと手を止めて、額に滲んだ汗を拭った。水無月に入って、朝夕は大気に幾分ひんやりとしたものが混じるけれど、昼間はもう夏を思わせる暑さになる。もう少し経って梅雨に入れば幾らかは涼しくなるだろうが、今からこの陽気では本格的な夏が思いやられる。そんなことを考えていると、我知らず溜め息が零れてきた。
お絹は丁度、長屋の共同井戸で洗濯をしていた最中であった。風もない昼下がりには、誰かが軒先に早々と吊した風鈴もそよとも動かない。
それがかえって余計に重苦しいような暑さを感じさせていた。
お絹はふと手を止めて、額に滲んだ汗を拭った。水無月に入って、朝夕は大気に幾分ひんやりとしたものが混じるけれど、昼間はもう夏を思わせる暑さになる。もう少し経って梅雨に入れば幾らかは涼しくなるだろうが、今からこの陽気では本格的な夏が思いやられる。そんなことを考えていると、我知らず溜め息が零れてきた。
お絹は丁度、長屋の共同井戸で洗濯をしていた最中であった。風もない昼下がりには、誰かが軒先に早々と吊した風鈴もそよとも動かない。
それがかえって余計に重苦しいような暑さを感じさせていた。