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凍える月~吉之助の恋~
第11章 第四話 【はまなすの子守唄】 其の参
翌日。
お絹と伊八は予定どおりに、まず北方城下の外れにあるという長屋を訪ねた。だが、二人の危惧したように、既にその長屋はとうの昔に取り壊されて跡形もなかった。何しろ、お縞やその父母が住んでいたというのは今から三十年近くも前の話である。当時そこにあったという長屋がそのままあるとは思えなかったけれど、もしかしてという一抹の期待もあった。
おまけに、その界隈の住人も既に亡くなっている人間が多かった。しかし、何人目かにお縞一家を知っているという者にやっとめぐり逢えた。お縞の幼なじみだとかいう女で、おはまと名乗った。歳は三十六になるという。お縞とは同年だというから、今更ながら、亭主の留七よりは五、六歳は年上だったのだと判る。
お絹と伊八は予定どおりに、まず北方城下の外れにあるという長屋を訪ねた。だが、二人の危惧したように、既にその長屋はとうの昔に取り壊されて跡形もなかった。何しろ、お縞やその父母が住んでいたというのは今から三十年近くも前の話である。当時そこにあったという長屋がそのままあるとは思えなかったけれど、もしかしてという一抹の期待もあった。
おまけに、その界隈の住人も既に亡くなっている人間が多かった。しかし、何人目かにお縞一家を知っているという者にやっとめぐり逢えた。お縞の幼なじみだとかいう女で、おはまと名乗った。歳は三十六になるという。お縞とは同年だというから、今更ながら、亭主の留七よりは五、六歳は年上だったのだと判る。