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凍える月~吉之助の恋~
第11章 第四話 【はまなすの子守唄】 其の参
逆算すれば、留七と所帯を持ったのは二十九、ほぼ三十近かったに相違ない。早婚の当時としては、これは最早嫁き遅れとさえ言えない晩婚であった。
もっとも、お縞は縄暖簾に長く勤めていたというし、年老いた両親の面倒をずっと一人で見ていたというから、そのために婚期を逃していたのだとは容易に察しがつく。恐らく留七と一緒になったのも二親が亡くなって後のことなのだろう。
おはまは最初はなかなか思い出せないようであった。何しろ、まだ子どもの時分のことゆえ無理もない。辛抱強く待つお絹に、それでも、おはまは記憶の糸を手繰り寄せながら、ゆっくりと話してくれた。
お縞の父親は小間物の行商をしていた。商売はあまり流行っているとは子ども心にも思えず、お縞はいつも粗末な着物を着ていたように記憶している。
もっとも、お縞は縄暖簾に長く勤めていたというし、年老いた両親の面倒をずっと一人で見ていたというから、そのために婚期を逃していたのだとは容易に察しがつく。恐らく留七と一緒になったのも二親が亡くなって後のことなのだろう。
おはまは最初はなかなか思い出せないようであった。何しろ、まだ子どもの時分のことゆえ無理もない。辛抱強く待つお絹に、それでも、おはまは記憶の糸を手繰り寄せながら、ゆっくりと話してくれた。
お縞の父親は小間物の行商をしていた。商売はあまり流行っているとは子ども心にも思えず、お縞はいつも粗末な着物を着ていたように記憶している。